家から歩いて5分くらいのところには、小さくて古い三階建てがある。昔何かの工場の事務棟に使われていたらしい。今はほとんど空きだから、部屋を貸し出している。
そこで僕は部屋を一つ借りて、オフィス?事務所?工房?隠れ家…みたいなものを作った。
僕は翻訳の仕事をしている。数年前から名ばかりの一人会社を設立したけど、家族の事情、そしてコロナのせいで、ほとんど何もできなかった。ただ蔵書とパソコンを運び込んで、一人きりになりたいとき使ったりしている。
今もそのとおり、隠れ家でパソコンに向かっている。
息子は登校。妻は家で家事。
三度の飯まで僕に頼っていたけど、「そろそろ解放してくれ」と冗談半分に妻に言った。
「そうね。あたしもいつまでもダメ人間でいるわけにも行けないね」
「悩み事はほとんど片付いてるから、しっかり生きていこう」
「あんまりストレス抱えないでね。今でも不穏な感じがするわ、あなたは。うちはあまりお金に困っていないから、稼ぎが悪くても、多能なあなたに最適な道を選んでね」
「わかってる。なんとかするから」
2023年9月19日火曜日
2023.03.23 事務所。
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